理学療法士がまとめたノート

統計学備忘録(R言語のメモ)

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X連鎖劣性遺伝のキャリアの診断

臨床の課題を統計学で読み解く練習

前提)高校の生物学の復習.デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy: DMD)はX連鎖劣性遺伝に該当します.母親が保有者、父親が正常である場合に、生まれてくる男児DMDである確率は0.5となります.ちなみに母親は保有者である確率は、「ある」・「なし」で考えれば0.5になります.

では問題です
Aさん(女性)にはDMDが発症した兄弟がいます.Aさには、夫と二人の息子がいます.夫と二人の息子にはDMDは発症していません.つまり正常です.しかしAさんが検査Tを受けたところDMDのキャリア陽性であることが判明しました.検査Tの感度は0.95、特異度は0.85です.Aさんがキャリアである確率を求めてよ.

ヒント
最終的には検査で陽性だった場合のキャリアである確率を求めます.
P(キャリア│検査陽性)=P(C|T陽)が最終的な答えです.
P(C):キャリアである事前確率
P(N):キャリアでない事前確率
P(T陽|C):キャリアで検査が陽性となる確率(感度)
P(T陽|N):正常で検査が陽性となる確率(偽陽性確率=1‐特異度)
単純に考えるとベイズの定理より


 P(C|T陽)={P(T陽|C)P(C)} ÷ {(P(T陽|C)P(C))+(P(T陽|N)P(N))} 


を求めればよいのですが、もう一工夫必要になります.
それは、息子が二人とも正常である場合の母親がキャリアである確率を考慮するということです.
つまり P(母親がキャリア|息子二人が正常) という条件付き確率です.

同様にして
P(キャリア│検査陰性)も求めることができます
これは検査が陰性と出たので、母親がキャリアである確率です
つまりキャリアである人を見逃してしまう確率です

 

ベイズの定理を用いて考えます
ちなみに答えは以下の出典を見て考えましょう.

出典)柳川 堯 , 荒木 由布子; バイオ統計の基礎―医薬統計入門,近代科学社 ,2010,p19-22